in the morning rain

ロンドンに留学している大学生のブログでした

Netflixの簡単レビュー。映画「フランク」感想。また日本での洋画のプロモーションについて。

うーん、もう留学も半年以上経ってしまったのか早い。

先週末は最近加入したばかりのバンドの初スタジオ練習で土日とも忙しくなるなぁとか思っていたら、スタジオ二日前にメールで解雇通告を受けました。こんなことってあるんですね(笑) 元気にやってます。

 

そんなわけで土日がぽっかり空いてしまったので、以前から気になっていたNetflixを始めてみました。映画やテレビ番組の定額制ストリーミングサービスってやつですね。日本ではまだ始まっていないようだけど、全世界(主にアメリカ)で会員が5000万人くらいいるそうで、イギリスでも名前をよく聞きます。日本ですでにサービスが開始しているHuluと同種のサービスですね。Netflixと他のサービスとの比較は、他のものを使ったことがないので自分では正直よくわかりませんが、画質やコンテンツの量でNetflixはどうやらすごいらしいです。ちなみに月額は1500円くらい。

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特に知識もなく登録したので、始めNetflixってSpotifyでたいていの音楽が聴けるように、どんな映画やテレビ番組も検索ひとつで見れるんだろう、とか思ってたのだけど、そういうことではないらしい。確かに量は多いけど、Netflixが公開しているコンテンツの中からしか見れないんですね。カテゴリが分かれていて、例えばSF映画だけでだいたい120作品くらい。全体でみると1000タイトルくらいでしょうか、いやもっと少ないかも。最新のものや有名なものもあるけど、名前を聞いた事のないものも多いです。

なので、以前から観たいと思っていた映画や誰かに勧められた映画をポチッと検索して観る、というよりもなんか映画みたいなーと思った時に、Netflix上にあるものから面白そうなものを選んで観る、という使い方になりそう。映画もそうだけどドキュメンタリーなんかもけっこう面白そうなものが多い。

とまぁNetflixのレビュー的なものをさらっと書いたものの、メインで書きたかったのはそこじゃないんですね。今日そのNetflixで観た「Frank」という映画についてです。この映画はポスターをみかけたことがあるくらいで内容は特に知らなかったけれど、なにかこのポスター画像に惹かれるものがあったし、Netflix上にある映画の紹介を読むとどうやらバンド系映画らしいということが分かったので、観てみることに。

日本では2014年10月、イギリスでは5月に公開された映画で、監督は自分知らない人だったんですけど、主演のひとりは最近よく見るイギリスの若手俳優ドーナルグリーソン(昨年ヒットしたアバウト・タイムの主役)です。

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映画の簡単な内容はというとミュージシャンへの憧れがあるが才能のない主人公のジョンがフランクというこのポスター中央のおかしなかぶりものをした男と出会って、一緒にバンドをやっていくというもの。フランクは風呂に入る時でさえも絶対にこのかぶりものを外さず、謎が多い。そして彼の音楽の才能は天才的。

結論から書くと、僕的にこの映画はものすごく良かった。映画の前半でもうこの映画のファンになり、後半多少ダレる時間帯もあったものの、最後まで観てあぁやっぱりよかった、よくできた映画だなと思った。

で、みんなどう思ってるかなと、映画鑑賞後のいつもの習慣でレビューサイトやブログなどを軽く覗くのだが、どうもいまいちな評価をしている人が多い。

僕がこの映画に好印象をもった理由としてはまず、音楽がすごく良い。これは音楽映画においてとても重要な要素。けっこう実験的な音楽ではあるけども、鋭くて格好よかった。そしてもう一つは、ミュージシャンというものの描き方がとてもリアルだと感じた、というところにある。音楽で食べていくということ / いい音楽と売れる音楽 / 芸術家、ミュージシャンでいることの自意識 / 天才と凡才/ などなど、、、様々なテーマにおいて、そのリアルな描写に、自分が音楽をやっていることもありギクっとするシーンや共感するシーンが数多くあった。

しかし!日本のレビューサイトを見てみると多くの人の評価が低い!そしてそれらを読んでみるとその内容で多かったのが、「音楽映画なのに音楽が良くない、異様」や、「登場人物に感情移入できない」や「映画がなにが言いたいのかわからない」などなど、僕が映画の感想として良いと感じた点を逆にネガティブにとらえた人が多かったような印象を受けた。(イギリスのレビューサイトでもそこまで評価は高いわけではなかったけど、日本の方が厳しい評価が多かったように思う)

おいおいお前、「僕はセンスがいいからこの映画の良さがわかります」的なこと言ってんだろどうせ、と思っていま読んでる方もいるかもしれないが、そういうことではない。もうちょっと読み進めていただきたい。

 

僕はこのような現象が起きている原因が、「フランク」が日本で上映された際の宣伝のされ方にあるのではないかなと思っている。この映画を好みそうな層の人たちに映画が届いていないのではないだろうか。適切でない層に映画がアピールされ、彼らは劇場に足を運んだものの、鑑賞前の映画に対するイメージと実際の内容がだいぶ異なっていたため、困惑する。それが低評価が多い理由なのではないかと考える。

 

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上のものが日本でFrankが公開された際のポスター。うーん英国圏版のポスターとだいぶ違っている。この映画はwikipediaでもジャンルはコメディととされており、確かに笑えるシーンも多い。ただ実際はその笑いもどこか風変わりなもので、そもそも扱ってるテーマが精神病であったりとけっこうシリアスなもので、全体的に作中の雰囲気は暗めである。英国版ポスターからは暗いとまではいかなくても、'かぶりもの'の不気味さや少し不自然な背景の色から、映画のシュールな感じがまぁ感じられる。そしてポスター自体けっこうおしゃれ、というかスタイリッシュな印象も覚える。

一方の日本版、ポップですね〜。映画タイトルのFRANKのロゴ、可愛らしいギターと五線譜、おまけに左下のバンドメンバーはどこかマヌケっぽい。実際彼らはポップさの欠片もないかなり尖ったミュージシャンの設定。そしてフランクの'かぶりもの'もどこか不気味さが足りない。ポスターがかわいらしすぎて、欧米版のポスターや映画自身が持っているちょっと不気味オシャレな感じが出てないんですね。

となると、そもそもいちおうジャンルはコメディであるし、この映画を観たら気に入るであろう層、すなわちインディー音楽好きやバンドマンたち、にはこの宣伝の仕方ではなかなか届かなそうではないだろうか。ファミリー向けコメディー映画か何かかな、といってちょっとサブカルな彼らの興味はここには向きそうにない。

 

ただ、正直なことをいうと、日本どうこう以前に英語圏でもこの映画のプロモーションはこれでいいのか?と僕は思っている。トレイラーを見ても面白おかしなコメディ映画にしか見えないので、映画を実際観た後にこれをみると、あまりの印象の違いに驚く。


Frank official film trailer - in cinemas from 9 May ...

 

映画を売るためには、本来の映画の印象を大きく変えるまでしなくてはいけないし、それが事実効果的であるということなのだろう。まぁ実際シリアスで、観る人を選ぶ映画であるのだから、それをそのまま見せるより、カップル、ファミリーで楽しめる、笑える映画だよ、と売った方が映画の集客は増えるに違いない。しかしそれが原因で映画に対する適切な評価が下されないとなるとそれもそれでどうなんだろう、という気持ちだ。

 

 

さぁ、ここまで僕が今日観た映画「フランク」について書いてはみたが、映画のプロモーションについてもう少し書きたいことがある。それは洋画の日本における独自の売りかたについてだ。

イギリスに来るまで全く気がつかなかったことだが、これがけっこう面白い。最近の映画でこれが顕著だったのが「ベイマックス」だ。この映画は日本の方がイギリスよりも公開が早く、僕はSNSで日本の友人たちが「ベイマックス観た」とかよく投稿しているのをみて、あぁいま日本で「ベイマックス」って映画が流行ってるらしいぞ、そしてそのポスター画像などを見てどうやらロボットと少年の友情物語らしいぞ、泣けそうだな、楽しみだ。とか思っていた。けれど、僕はけっこう映画館に足を運ぶ方なのに、そのようなポスターをみた記憶はなかった。

その理由はこうだ 

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ひょっとしたら上のポスターをみて驚いた方もいるかもしれない。欧米版と日本版では題名、そしてポスターが与える印象が全く違うのだ。こちらでは、日本での宣伝に使われている、「優しさで世界を救えるか」や「あなたの心とカラダを守ります」といったような、ベイマックスと少年の友情話という'泣ける映画'ではなく、バリバリのヒーローアクションものとして宣伝されていたのだ。そして映画を実際に観てみると、友情要素はあるものの、やはりこれは6人のヒーロー達によるアクション映画(まさにBig Hero 6)であった。欧米版ポスターが描くイメージが実際の映画の内容そのものという感じで、日本版ポスターからイメージさせられるような内容ではなかったのである。実際日本で劇場に足を運んでみて、想像していたのと違う!と肩透かしをくらった人は多かったのではないだろうか。

 

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なかなかの焦点をずらした宣伝をしているので広告詐欺っちゃ広告詐欺とは言えるものの、この日本のプロモーションは実に上手いといえる。ドラえもんで育ってきた日本人には、このロボットと少年の友情、というテーマは響くに違いない。(実際昨年の興行収入みてみるとドラえもんがアナ雪に続いて2位だし)。それにこの優しい印象のポスターは映画が子供向けアクションもの以上の要素をもつことを表しており(というかこのポスターにアクション要素ないけど)、ファミリー層以外にも映画が受け入れられるように作られている。カップルや友人同士で観に行っても全く不自然でないように思える。映画の邦題に関しても6人のヒーローではなくベイマックスに焦点を当てたのが上手いと感じる(これもドラえもん的な?)。

ちなみにロンドンの映画館で僕が観たときはほとんどが小学生くらいの子供たちとその親、というファミリー客であったように思える(なんせこちらでは子供向けヒーロー映画として売られているからね)。

ちなみに、個人的に「ベイマックス」けっこう面白かったです。映像もさすがディズニーで魅力的だったし、ロボットとかメカとかってやっぱりいまだに楽しめてしまう。おまけに最後はベタだけどちょっと泣ける。(さんざんアクションものだと書いておきながらも、いちおうやはり最後は感動させにかかってくるし、僕はしっかりそれに乗ってしまった。)

 

 

 

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まとめ

 

「アナと雪の女王」だって原題はFrozenだし、アカデミー賞をとったBoyhoodの邦題は「6歳のボクが大人になるまで」。こういうユニークで映画に良い影響をもたらしているといえる邦題やプロモーションの例を挙げるとキリがない。映画だけじゃなくてCDや書籍だってそうだろう。

一つ一つの邦題のつけ方、ポスターのデザインなどに、配給会社の日本マーケット向けに最適化された戦略がある、ということはこっちに来るまで気がつかなかったことであるし、興味深い発見だった。また、宣伝トレイラーや広告はそのような戦略に則って作られているものだ、ということを意識するとまた少し違った視点でそれらに向き合えたりもするかもしれない。映画のイメージは操作可能である、ということだ。これはニュース報道とメディアの関係ともよく似ている。使われている素材に嘘はないのだけど見せ方はいくらでも編集できてしまうのだ。

まぁだから映画の広告には常に批判的になろう、とかそういうことを言いたいわけでもないのだけれども。むしろ、逆にポスターやジャケットがイケてなくても、中身はイケてるかもしれないよ、ということが書きたかったことなのかもしれない。

そして音楽やってる人はぜひ「フランク」観てみてください。

 

Netflixから始まり、宣伝があまり上手くない例として「フランク」そして日本向けの売り方が上手だった例として「ベイマックス」を挙げさせてもらった。

気づいたらまたけっこう長くなってしまっていたなー。短い文章をさらっと書いて毎週なにかしら発信、みたいな形にしてみたいのだけどなかなか難しい。

長いのに最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。